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令和2年度技術士第一次試験問題解答(機械)04
令和2年度技術士第一次試験問題解答(機械)04
【正答番号:③】
【正答番号:③】
<この内容の解説者>
【経歴】元軸受メーカー技術者。現在は、自動車部品メーカー技術者。技術士一次試験(機械)合格。
【専門】軸受、材料力学、金属材料(熱処理)
<問題>
下図に示すように,長さがlの棒1と棒2が接合され,剛体壁で無理なく固定されている。棒1と棒2の縦弾性係数をE1, E2, 断面積をA1, A2, 線膨張係数をα1, α2 とする。それぞれの棒の温度を微小量ΔTだけ上昇させたとき,棒1に発生する応力σ1として,最も適切なものはどれか。
①\(\sigma_1=\frac{(\alpha_1-\alpha_2)A_2E_1E_2}{A_1E_1-A_2E_2}\Delta T\)
②\(\sigma_1=\frac{-(\alpha_1+\alpha_2)A_2E_1E_2}{A_1E_1-A_2E_2}\Delta T\)
③\(\sigma_1=\frac{-(\alpha_1+\alpha_2)A_2E_1E_2}{A_1E_1+A_2E_2}\Delta T\)
④\(\sigma_1=\frac{(\alpha_1-\alpha_2)A_2E_1E_2}{A_1E_1+A_2E_2}\Delta T\)
⑤\(\sigma_1=\frac{-(\alpha_1-\alpha_2)A_2E_1E_2}{A_1E_1+A_2E_2}\Delta T\)
【正答番号:③】
出典元: 公益社団法人日本技術士会
解説
材料力学の問題です。まず、下記の熱ひずみと熱応力について思い出しましょう。
温度ΔT上昇したときの棒の伸びλは、
\(\lambda=\alpha\Delta TL\)・・・①
α・・・線膨張係数
L・・・棒の長さ
あと、伸びの公式を思い出しておきましょう。式の導出は令和2年度技術士第一次試験問題解答(機械)02を参照してください。
\(\lambda=L_0\varepsilon=\frac{PL_0}{AE}\)・・・②
①式より、棒1、棒2に温度ΔT上昇したときの伸び(λ1, λ2)は、
\(\lambda_1=\alpha_1\Delta Tl\), \(\lambda_2=\alpha_2\Delta Tl\)・・・③
次は、②式を用いて、温度上昇により棒が伸びようとした反力が作用するので、
\(\lambda_1=\frac{P_1l_1}{A_1E_1}\), \(\lambda_2=\frac{P_2l_2}{A_2E_2=\frac{P_1l_2}{A_2E_2}}\)・・・④
P1・・・棒1に作用する反力
P2・・・棒2に作用する反力
※棒に作用する反力は釣り合うので、P1=P2
ここで、棒は固定されているため、伸びは0です。
③式、④式を用いて、
\(\alpha_1\Delta Tl+\alpha_2\Delta Tl_2+\frac{P_1l}{A_1E_1}+\frac{P_1l_2}{A_2E_2}=0\)
\(\frac{P_1l\left(A_1E_1+A_2E_2\right)}{A_1E_1A_2E_2}=-\left(\alpha_1+\alpha_2\right)\Delta Tl\)
\(P_1=\frac{-\left(\alpha_1+\alpha_2\right)A_1E_1A_2E_2}{A_1E_1+A_2E_2}\Delta T\)
応力の公式 \(\sigma=\frac{P}{A}\) より、棒1に発生する応力は、
\(\sigma_1=\frac{P_1}{A_1}=\frac{-\left(\alpha_1+\alpha_2\right)A_2E_1E_2}{A_1E_1+A_2E_2}\Delta T\)
よって、正解は「③」です。
この問題で問われていることは?
この問題で問われていることは?
熱膨張を理解しているか。
物体は、熱を加えると膨張します。よくする作業として、焼嵌めがあります。
焼嵌めとは、軸に円筒部品(軸受や金属カラー等)を熱し、拡径してから軸に嵌めることです。
各材料には、線膨張係数があるので、何℃まで温度上昇すれば軸に嵌められるか計算することができます。
